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セラヴィ

働き方改革だそうです。

「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が先日交付されましたね。

裁量労働制は見送られましたが、高度プロフェッショナル制度の導入は可能となり、「働かせ改革」だと批判の声も上がっています。

とは言え、裁量労働も高度プロフェッショナルもあまり縁のなさそうな業界では、労働者にやさしい手が差し伸べられたと言ってもいいのじゃないでしょうか。

 

併せて人口減少社会です。

ウォルマートが日本市場からの撤退を表明しましたね。

人口減少社会の日本から手を引いて他の有望な市場へ資本を移していくのだとか。

その人口はただ減るだけじゃなく、生産労働人口も減っていくというのですから、働く一人の密度が濃くなるということが言えますね。

 

企業は人手不足を補うのに、これまで敬遠していた人たちでも受け入れざるを得ません。

そしてそういう人たちを雇うと国は補助金を出すというので、ありがたいとも思えるのですが、財政が厳しい中、本当にそれでいいのかとも考えてしまいますね。

人への投資が進むことはいいことに違いありませんが、その人を雇用する会社がひっ迫してしまうのでは元も子もありません。

そうして小さな企業は大企業に飲み込まれ、ますます「長いものに巻かれていろ」という風潮が進むのを懸念します。

皆、強いもの大きいものの下にこぞって集まってき、安眠をむさぼるだけで、陳腐な安心にしがみつき、チャレンジ精神が失われていく、、そういう社会に未来はあるのでしょうか?

そんなことを考えて憂鬱になってしまいます。

 

先日、その憂鬱を吹き飛ばしてくれるような映画を観てきました。

「セラヴィ」

フランスの映画です。

まだ始まったばかりだというのに、しかも土曜の夜だというのに、スクリーンはがらがら。

評判のアニメからは大勢人があふれていましたから、人気がないのが分かりますね。

日本の映画の俳優さんは日頃お茶の間で見慣れていますから、その人をわざわざ映画館で見る気がしません。パルムドールの受賞はおめでたいですが、「万引き」がタイトルでは気が滅入ってしまいます。

 

というわけでフランス映画、ヨーロッパの映画と言ってもいいですが、大好きです。

そうだ、映画を見に行こうと思い立って調べてみたら、ちょうど私のお気に入りの俳優ダニエル・デイ・ルイスの引退作品かと言われる映画が上映中だったのですが、金曜日が最終日。後悔の念を残したまま選んだのがこちらの映画。しかしこれが大正解だったのは、神様のお導きに感謝です。

 

舞台はパリでしょうか、エッフェル塔の映像が冒頭に出てくるのでそうだと思うのですが、その後は緑豊かな木々に囲まれて建つクラシカルなお城のような結婚式場。お世辞にもよく手入れをされたとは言えない広い芝生と花壇の庭。

ここで一組の結婚式が執り行われ、その準備から終わってスタッフらが解散するまでの一昼夜が、式場側から、特に一人の初老の経営者を中心に描かれています。

 

この見るからに不健康そうな初老の経営者、映画が進んでいくと分かるのですが、会社を売却して引退を考えています。ビジネスとしてはそこそこなのでしょうが、心労で疲れ果てているといった感じ。おまけにプライベートでは妻とも恋人ともうまくいっていない様子。大勢の中にいるのに孤独を背負った小さな会社のワンマン社長さん。

スタッフは皆個性的な面々です。肌の色や言語も様々で、今のフランスを象徴していますね。リーダー格の数人を除いては皆寄せ集めといった感じ。普段は何をしているのやら、当日だけのアルバイト、それも急遽今日声がかかったので慌てて来たというものもいて、大丈夫か?と見ていて心配になります。案の定、給仕の仕事に集中できない。「おい、こら、お前金もらうんだろ、しっかり働け」と突っ込みたくなります。

と、やはり心配した通り、とんでもないことが起こる。でも、こんなことも何度か経験しているのか、社長さん、仲間の同業者に応援を頼んだり、あれこれ指示したりして何とか事なきを得ます。そういうことをほとんど一人で切り盛りしているものだから、途中低血糖で倒れてしまうなんてことも。そのうえ、日本で言う労働基準監督署の人間らしき人物が調査に来ている様子なのもあって、気が気ではない。それでもなんとか危機を乗り越え、無事式も終わるのかと思いきや、またしても大惨事。とうとう社長さん切れて、スタッフらに怒り心頭。「お前らはどいつもこいつも…!」「俺は命懸けでやってるんだ!!」と。

もう、お前らで何とかしろ、とさじを投げてしまうのですが、ここからスタッフたちが個性を発揮し始めるんですね。最後は式場にいる皆が酔いしれる素晴らしい一夜になります。

辺りが白み始め、お客がすべて帰って撤収作業をしているスタッフらに社長さんは集まってくれと声をかけます。そしてあんな風に怒ってしまったことを謝ってから、素晴らしい式だった、感動したと告げます。売却をやめ、このスタッフらとこの素晴らしい仕事を続けることに腹を括るのですね。

皆、次の仕事の約束をして、充足感に満たされながら散っていきます。

今日も明日も、うまくいかない事ばかりかもしれないけれど、とりあえず今は幸せ、と。

社長さんも、いわゆる社会的弱者と呼ばれるような他のスタッフ一人一人も、とても愛おしく思えてきます。

「セラヴィ」

「これが人生さ」…フランス人がよく使う言葉だそうです。

 

働き方改革とは、そもそも私たち日本人の多くが働き過ぎるのを改め、もっと他のことに時間とエネルギーをかけましょう、欧米の人たちみたいに、ということから始まったことと思います。少なくとも、あなたのその仕事は、他の大事なことを犠牲にしたり、命を削ってまでしがみつくほどのことですか?あなたの会社は、従業員に大事なことを犠牲にしろ、命を削ってでもやれと言えるほど価値のある仕事をしていますか?と問い掛けています。そもそもそんなことを国が主導しなければならないのはおかしなことですし、いいようにしてやられないように気を付けなければなりませんね。私たちの常識は世界の非常識では寂しいです。それこそが我が国ニッポンなどと煙に巻くのはいかがなものかと思います。

 

小さな会社の経営者の私は、何とかこの会社を未来永劫存続させるため、日々あれこれ情報を集め、勉強をし、知恵を働かせています。スタッフ一人一人が個性と力を発揮し輝けるようにと願いながら。

評価制度、キャリアアップ制度、独立支援制度なども構築中です。

しかしまだ何かが足りない、そう感じています。

問題の根本はやはり一人一人の中にあるからです。

そんなことも伝えていけたらと思っています。

それが人生だ、と。